離職率が高い企業とは?離職率の意味と会社選びで気にすること
2024年4月25日更新
はじめに
本記事では、離職率の高い企業とはどういうことかについて説明します。
結論からいうと、離職率は終身雇用の時代であれば企業の良し悪しを見る重要な指標の一つでしたが、いまは終身雇用のような組織構造をしている企業が少ないので、離職率の高さが必ずしも悪い企業とはなりません。
また、「離職率」自体が、捉え方の違いによっても数字が大きく異なることがありますので注意が必要です。
いまの時代の就職活動における「離職率」を正しく理解し、就職先の判断をより適切にできるように情報収集や面接に臨んでいきましょう。
特に以下のような就活生に向けて記事を執筆しています。
- 離職率の正しい意味合いを理解したい
- 離職率が高いことにどういう意味があるかを知りたい
- 面接で離職率を尋ねても良いのかを知りたい
そんな就活生に向けて執筆しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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「離職率」の定義を確認
言葉としてよく耳にする「離職率」についてを確認しましょう。
厚生労働省の定義としては、「常用労働者数に対する離職者数の割合」としています。
すごくシンプルな例でいえば、ある会社の1月1日時点常用雇用者数が100人いて、そこから5人の離職があれば、その期間での離職率は5%です。
ただし、実際の離職率は単純ではなく、計算方法も企業や掲載している媒体によってもばらつきがあります。
実は「離職率」自体には、会計基準のような明確な統一見解はありませんので、会社横断で数字を見比べても、検査対象が一致していなければあまり意味はありません。
また、意外と知られていないことですが、離職は、クビや依願退職によるその職場への離脱だけではなく、協力企業への出向、契約形態を変更して働き続けたとしても、その会社における常用雇用ではなくなった人たちがまとめて離職者と表現され、離職率に反映されます。
そのため、業種業態によっては言葉の見た目ほどシビアではない場合もあることも、注意が必要です。
離職率を表現する際、多くの企業で行っているもののひとつとして「入職何年目での離職率」を掲載する場合が多く、多くの場合は1年・3年など。
これは、入社した人たちが1年または3年以内で常用雇用者ではなくなる割合となれば、比較的読みやすい数字です。
ただ、単純に入職離職率にしても、中途採用のベテランが1年で退職するのと、新卒採用で1年で退職するのとは大きく意味合いが違うと感じられるのではないでしょうか。
そのため、もっといえば「新卒離職率」の定義があれば、新卒のみなさんが想像しているような離職率に近づきます。
このように、単に離職率という数字だけに一喜一憂するのではなく、その数字にどのような意味が込められているかを見定めておく必要があるでしょう。
近年では、離職率よりも、その会社に何年以上勤務しているかということをはかる「定着率」という指標を使う企業もあります。
まずは、「表示されている離職率はどのような指標なのか」「その業態業種において適正な離職率なのか」などを踏まえて数字を見ることが大事です。
参照ページ
離職率が高い会社が危ない会社、とは限らない
離職率が高い会社は危ない、と考える方も多いでしょう。
もちろん、就職したい会社が終身雇用で安定し、退職者の少ない会社を目指しているという方であれば、離職率が低いほうが「いい会社」と感じるかもしれません。
しかし、みなさんも感じているように、日本はかつて終身雇用を主としていましたが、いまや多くの企業が終身雇用とはなっていません。
明確に、終身雇用をやめました・終身雇用を続けています、などとアピールするような企業はほとんどなく、働き方や価値観に変化が生まれ、優秀な人材がより良い環境を求めて流動するようになっていき、結果として現状がそうなったとみたほうが良いでしょう。
日本の労働人口が徐々に減少し、社員年代が、シニア層を頂点として大勢の若い年代が支えているピラミッド型のバランスになっている企業は、いまでは珍しいと思われます。
終身雇用の離職者が多いということであれば、その会社はそもそも制度が破綻している、だから危ないという論理が成り立ちましたが、それはもう何十年も前の話です。
実際、転職による中途入社者は、ある調査では30代までには50%以上、生涯で平均転職回数が2.5回という数字が出ています。
一方で、新卒から一度も転職せず同じ会社で働き続けている人は全体で1割程度です。
まずは、離職率が高いことが必ずしも危ない会社である、という観点は持たないことにしましょう。
参照ページ
リクルート | 就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022
離職率の一般的な数字、15%と10%と30%
では、実際のところ離職率が何%なら高く、何%なら低いと判断すべきでしょうか。
ここまで述べた通り、離職率は集計方法や考え方が各社によってばらつきがあるので、あくまでも参考値としてとらえてください。
厚生労働省の発表した離職率の平均値は15%といわれています。
これは、特に業態や就業年数を指定しない離職者の割合で、さらに全体の平均です。もちろん業種や企業規模によって、これより高い・低いといったことは出てきます。
入職1年目離職率平均約10%、2年目も約10%、3年目も約10%です。
その結果、入職3年以内離職率は30%、という表現がされることもあります。
印象として「3年経つと辞める人が多い」という言葉を聞くことがあるかもしれませんが、あくまでも平均をすれば、勤続年数で極端に差は出ず一定の割合で辞めている、ということになります。
何度もお伝えする通り、これは平均ですので、この数字より大きければダメ、小さければ良いではなく、あくまでも指標のひとつとして頭に入れておきましょう。
参考ページ
就職活動を本格化する前に離職率を調べてみる
ここでは、就職活動の進行にあわせて、離職率という情報とどのように向き合っていくかについてご紹介します。
自分のやりたい仕事、自分にあった会社であれば、離職率自体にこだわる必要はありませんが、それはあくまでも結果論であり、やはり不安要素の一つである離職率もできることなら把握した状態で内定・入社したいものです。
ただし、離職率は企業によってはセンシティブに捉えられかねない事柄である場合もありますので、どうしても企業から離職率の情報を引き出したい場合は慎重に行動することをおすすめします。
上場企業はIR資料を活用
上場企業の場合、IR資料(投資家情報)に離職率など職員の定着率を記載している場合があります。
新卒入社を目指すみなさんもその企業の離職率は気にするかもしれませんが、職員の定着率を気にしているのは、会社のオーナーである投資家も同じです。
あまりにも離職率が多い企業の場合、本当に成長できるのか、その会社の投資に意義があるのかと思うのは当然です。
離職率をはじめとする、企業の数値的な情報は、IR情報のなかでもより数字に着目した資料である有価証券報告書に記載される場合があります。
有価証券報告書は、上場企業であれば内閣総理大臣へ提出することが法律で決まっており、もちろん虚偽の報告をすれば上場の廃止を求められる、非常に重要な書類です。
2023年1月より、有価証券報告書のなかで「従業員の状況」、つまり人的資本の開示を求められるようになりました。
ただし、この人的資本で掲示するのは正社員比率や男女別の雇用状況、女性の管理職登用割合など、近年のグローバルな投資家から要請されているような情報がメインで、離職率の記載はあくまで任意です。
また、先の章でも述べた通り、離職率の計算方法に明確な基準はなく、比較的操作が可能な類の数字ですので、どのような基準で計算されたものかは、よく確認をする必要があります。
上場企業は人気のある企業が多いので、離職率に限らず、最低限志望する企業の直近のIR情報は、ぜひ見ておきましょう。
誰でも見ることのできる情報であり、これから就職するみなさんと同じか、それ以上にその企業の未来を気にしている「投資家」に向けた情報です。
しかも法律によって虚偽が許されない厳密な書式によって成り立っているので、信頼性も極めて高い一次情報となります。
就職支援センターを活用する
大学在学中であれば大学内の就職支援センター、そうでない場合も雇用関係の外部窓口を積極的に活用しましょう。
就職支援側には求人とともにその会社のある程度の経営情報も届いています。
就職活動は、一人で頑張ってしまいがちですが、こういった外部のサポートを有効に扱うことも、就職活動のなかでしっかり学んだほうが良いと考えます。
特に面接が佳境になってくると、大学の就職支援センターに行くことが難しい場合もあります。
忙しくなる前から、就職支援センターの活用方法を確認しておきましょう。
離職率や有給取得率など、就活生からは直接聞きにくいことも、就職支援センターを通して情報をもらえる可能性はあります。
ここまでは上場企業の情報収集について説明しましたが、日本の上場企業は約4千社に対し、非上場企業は200万社です。
上場企業を目指したい方は多いかもしれませんが、非上場企業でも魅力的な企業は数多くあります。
しかし、非上場企業の情報収集は上場企業のように簡単にはできません。
会社のウェブサイトや、採用サイトをしっかり用意しているケースもあれば、ハローワークなど限られた場所でしか求人公開していない企業も存在します。
こういった就活に関するノウハウが集約されている場として、あるいは情報収集する非常に有効な手段として、就職支援センターを十分に活用していきましょう。
先輩訪問を活用する
もし、大学の先輩や知り合いが就職を希望する会社にいるのであれば、OB訪問をするという手もあります。
OB訪問自体は採用プロセスとは関係ない場合も多いですが、その会社の生の情報を聞くことができる非常に重要な手段です。
みなさんが経験するであろう就職戦線をやりとげた先人の知恵もたくさんあるはずなので、機会があれば積極的に情報を得てみましょう。
会社の先輩がどの立場であるかにもよりますが、おそらく入社2~3年くらいであれば正確な離職率を把握していないにしろ、体感的な離職具合は把握していると考えられますし、離職率以外にも、ざっくばらんにその会社について教えてくれるのではないでしょうか。
面接で離職率を聞くかどうかはテクニック次第
いろいろと情報収集したものの、正確な離職率を知ることはなく、書類選考を経て、面接に臨むかもしれません。
面接の場では「何でも聞いてください」と就活生側から質問ができるケースがありますが、離職率を問いただすのはかなり慎重になったほうがよいと心得ましょう。
それでも、知っておきたい離職率、どのようなテクニックで確認するかの一例を示します。
ただし、これらが確実に適用できるかどうかは、面接官やその時の面接の雰囲気などにも左右されますので、十分注意してください。
離職率を把握するためのソフトな質問「人材の確保について」を使う
いまや、どこの企業も人材不足で悩んでいる時代です。
それであれば、わざわざ直接的に「離職率」という言葉を使わなくても、不足している人材でどのように組織運営しているかを垣間見れば、自ずと見えてくると考えられます。
- 人材という点で現在見えている課題や、それに向けた取り組みはありますか?
- 中途採用は毎年どの程度の人数を受け入れていますか?
おそらく、いまや転職市場も活況で、その会社の優秀な人材がより良い企業へ転職してしまうことは珍しくありません。
優秀な人材こそ、しっかりと留めておくような施策をすることで人材不足を回避しているはずですので、そのような課題が見えて施策が進められていることで、離職率を抑える取り組みを確認できるはずです。
離職で痛手となるのは、特に将来のリーダー候補の不在です。
次世代リーダー候補である20代や30代前半の育成や定着率向上に力を入れていなければ、その企業の若手が不在で空洞となっている可能性があります。
中途採用を頻繁に行っていることは組織の新陳代謝としては有効ですが、計画的に一定数の中途採用を見込んでいるなら、そもそも新卒からの若手が十分成長しておらず、中途採用を準リーダーに据えた組織形態である可能性も考えられます。
といった具合に、ソフトに離職率具合を推測するという手がありますが、もちろん推測ですので、実際の離職率とは関係はないことも……。
「質問の焦点がよくわからない」と痛いところを突かれてしまったら、素直に「御社の、特に若手の離職率はいかがでしょうか?」と真意を伝えましょう。
心証が下がる可能性もありますが、ちゃんと考えがあって質問をしていたという誠意が伝われば、そこまでマイナスにならないはずです。
はっきりと離職率を聞き出す手もあるが、十分注意して臨む
ざっくばらんに、素直に「離職率、特に新卒の離職率はいかがですか?」とはっきり聞くことは作戦の一つです。
ただし、条件があります。
- 最終面接(経営者・役員面接)ではなく、現場担当者・責任者の面接で聞くことが望ましい
- 回答をもらえた・もらえないにかかわらず、その次のリアクションを必ず想定しておく
- 離職率の確認は数ある質問の一つにして、最初と最後の質問には使わない。
面接は複数回、最低でも一次面接と最終面接の2回行われることがほとんどです。
最終面接は最終的な内定を判断する経営者・役員などが応対するはずですが、そこでは全力で自身のアピールや将来性を伝えるべきで、その場で「離職率は…」と聞くのはやや場違いな雰囲気を出します。
最終面接に行くまでに二次面接・三次面接があるのであれば、一次面接での離職率の質問は避けたほうが良いかもしれません。
一次面接では離職率といった実務的な確認をするよりも、優先すべきアピールが数多くあるからです。
二次面接・三次面接では現場責任者や人事責任者が対応するケースがほとんどですので、離職率に詳しい可能性もあり、その段階でみなさんの能力もある程度認めてもらえている段階ですので、真摯に応えてくれる可能性もあるでしょう。
実際に直接離職率を問いただした場合に、回答のパターンは複数考えられますので、そのいずれのパターンがきても、しっかりと次のリアクションを準備しておきます。
「想定外だったのでその回答に対して反応できなかった」というのが一番やってはいけないパターンです。
企業にとってはナイーブな質問となる可能性もあり、深い考えなしに流れで離職率を聞いたのだろうか、と思われるのはかなりのマイナスイメージです。
【思っていた離職率より低い】場合
「定着率が高いようなので安心しました」と反応することができるでしょう。
離職率に対して胸を張って答えてくれる企業であれば、離職率もかなり低い値を出しているはずです。
【思っていたよりも離職率が高かった】場合
例えば離職率40%を超えていれば、入職して半数近くいなくなっているとなれば、率直に「高いのではないか、理由はなぜか」と聞いてもよいかもしれません。
これは心証が悪くなる可能性もありつつも、その離職率を把握しているのであれば、企業としても課題として受け止め取り組んでいるはずです。
そうではなく「たまたま運が悪かっただけ」「辞めちゃう人がいるのはしょうがないんだよね」などの反応を取っていたとしたら、それは離職率で見える数字以上に、就職するみなさんにとっては重要な判断の分岐点となることでしょう。
【離職率については答えられない】【今この場では確認できない】場合
きっぱり断られる可能性もあります。
「答えられない」という状況で離職率を焦点に根掘り葉掘り聞くことは得策ではありません。
このように少し空気が微妙となるような質問は、素早く次の質問に切り替えるのがテクニックの一つですので、答えられないというリアクションを受けたらすぐさま次の質問に変えましょう。
「最初と最後の質問にしない」というのはこのための保険で、最後の質問が「答えられない」ような質問で面接を終えることは、非常に気まずい印象を残します。
また、質問を聞かれて最初に尋ねるような質問でもありません。
この面接を通し、一番最初に思いつくのが離職率というのは面接をする側にとっても妙な印象を残します。
できることなら、手前でしっかりと濃い内容の質問をして、箸休め程度の気軽な質問、という印象を持って尋ねると良いでしょう。
もし面接が順調なら、ある程度面接官も信頼して、答えにくい質問だとしても応えてくれるかもしれません。
さいごに
離職率についての基本的な情報や考え方、実際の就職活動のなかでどのように離職率を調べて、面接ではどのように臨むべきかといった内容を説明しました。
内定をもらうことは重要ですが、本当にその企業が安心して働ける環境なのか、しっかりと把握したうえで臨むということも重要です。
上場企業では人材資本も重要視する時代となってきていますので、離職率や定着率を公開する企業も増えてきていますが、すべての企業が公開しているわけではありません。
また、離職率が高いから・低いからを重要な選定条件とはせず、あくまでも数多く存在する判断材料の一つ程度に捉えたほうが、より実りのある就職活動ができるのではないでしょうか。
この記事を参考に、みなさんの就職活動がよりよいものになることを願っています。