企業分析はここで差がつく!IR資料の基礎知識や見方を徹底解説
2024/5/28更新
はじめに
企業分析をする際は、IR資料を読むことで客観的な企業の情報を知ることができます。
IR資料の中でも企業分析に有用な有価証券報告書は、100ページ以上にわたって記載されていることもあり、何か効率的な見方がないか悩んでいる就活生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、IR資料の読解に悩む以下のような就活生に向けて詳しく解説していきます。
- IR資料っていろいろあるけど、結局何が重要かわからない
- 有価証券報告書の中でも企業分析に必要な項目をピンポイントで知りたい
IR資料の見方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の結論
IR資料の中でも、就活生が読むべきものは有価証券報告書です。
有価証券報告書の見方を知ることで、同業他社と比較したその企業の魅力や特徴を読み取れるようになります。
この記事を読めば、有価証券報告書を読む際に必要な前提知識、具体的な有価証券の見方についてもわかるようになります。
順を追って解説していくので、頑張ってついてきてくださいね。
IR資料と有価証券報告書
企業分析をする際に役立つ「IR資料」。
あらゆる資料をまとめて「IR資料」と呼ぶため、企業のホームページ上にあるIRのページを開いた学生は、情報の多さに辟易してしまうかもしれません。
しかし、就活生が企業分析を目的として読むべき資料は限られており、特に今回の記事で詳しくご紹介する「有価証券報告書」は網羅的に企業情報を取得できる資料のため重要です。
有価証券報告書の見方を説明する前に、まずはIR資料の概要を簡単に確認します。
- IR資料とは
- 就活生が読むべきIR資料
それぞれ見ていきましょう。
IR資料とは
「IR資料」と名前だけ聞くと難しそうな印象を持つ人も多いかと思いますが、一言でいうと「企業が株主や投資家に向けて公開する報告書群」のことです。
IRはInvestor Relationsの頭文字を取った略語で、直訳すると「投資家向け広報」となります。
企業の事業内容や年間業績、将来の計画等をIR資料にまとめて開示し、好調さや先行きを示すことで、投資家から資金を調達します。
就活生が読むべきIR資料
結論からいうと、就活生が読むべきIR資料は有価証券報告書と決算説明資料です。
ここでは、その根拠について順を追って説明していきます。
- IR資料の種類とそれぞれの特徴
- 就活生に役立つIR資料
IR資料の種類とそれぞれの特徴
主要なIR資料の種類は、以下のとおりです。
- 有価証券報告書
- 決算短信
- 決算説明資料
- 統合報告書
有価証券報告書と決算短信は、決算時点の企業状況をまとめた資料で、前者は年に一度、後者は四半期に一度開示されます。
企業の状況について大きな流れを掴みたいなら有価証券報告書、細かく追いたいなら決算短信を読むといいでしょう。
決算説明資料は、それらの報告書をグラフ等で可視化した投資家向けの説明資料で、情報の網羅性よりも内容のわかりやすさを重視しています。
統合報告書は、企業のビジネスモデルや将来の中長期的な戦略、計画が記載された資料です。
表にまとめると、以下のとおりです。
開示 | 情報量 | 読みやすさ | 信頼性 | |
有価証券報告書 | 義務 | ◎ | △ | ◎ |
決算短信 | 義務 | ◯ | △ | ◯ |
決算説明資料 | 任意 | △ | ◎ | ◯ |
統合報告書 | 任意 | ◯ | ◯ | △ |
就活生に役立つIR資料
就活においては、詳細な事業内容の理解や細かい財務情報まで把握する必要はなく、企業の特徴や業績の動向をざっくり理解することが重要です。
具体的な流れとしては、読みやすい決算説明資料を読んで概要を把握した上で、有価証券報告書を確認しましょう。
有価証券報告書の見方についてはのちほど説明します。
有価証券報告書が就活に役立つ理由
有価証券報告書は投資家から資金を集めることをいちばんの目的として公表されている資料ですが、企業情報がまとめられているため、就活生の企業分析においても非常に役に立つ資料となります。
有価証券報告書は100ページを超える膨大な資料であるため、読むのが非常に難しいイメージがあるかもしれませんが、主要部分だけをざっくり読めるようになるだけでも大きな武器になるでしょう。
就活において有価証券報告書が役立つ理由は、主に以下の2つです。
- 客観的にみた会社の魅力がわかる
- 同業他社との比較ができる
それぞれ詳しく解説していきます。
客観的にみた会社の魅力がわかる
企業のホームページにも強みや魅力について記載されている場合がありますが、それはあくまでも企業の主観的な発信です。
一方で、有価証券報告書には事実に基づいた情報しか記載されていないため、客観性が確保されています。
有価証券報告書には多くの情報が記載されていますが、就活に必要と考えられる情報は以下のとおりです。
- 経営指標:直近5年間の経営成績を数字の推移で確認できる
- 企業沿革:企業の成り立ちや歴史が確認できる
- 事業内容:事業の概要が確認できる
- 従業員の状況:企業に従事している従業員の情報を確認できる
経営指標を見ることで、企業の成長可能性や持続可能性といった将来性、投資家からの評価などを読み取ることができます。
従業員の状況では、従業員数や平均年齢などの基本的な情報をはじめ、平均勤続年数、平均年間給与といった働く場所を決める上で大事な情報についても確認可能です。
どの情報を魅力と感じるかは人それぞれですが、魅力に感じることをひとつでも多く見つけることで、就活のモチベーションにもつながるでしょう。
同業他社との比較ができる
企業分析では、「同業他社ではなく、なぜその企業に就職したいのか」を考えるのが非常に大切になります。
選考の過程で行われる面接においても、上記の質問は鉄板です。
さまざまな同業他社の有価証券報告書を確認することで、その業界における企業の強みや位置づけがわかるようになります。
なぜなら、有価証券報告書は基本フォーマットがルールで決められており、上場企業のすべてがそれに従う形で作成、提出しているからです。
同じ項目で比較することで、同業他社との違いを事実に基づいて明確にすることが可能となります。
有価証券報告書を読むために必要な基礎知識
就活に有価証券報告書を役立てるためには、以下のような基礎知識の理解が必要です。
- 会計知識
- 業種別の特徴
- 企業のライフサイクル
それぞれ例を交えながら説明していきます。
会計知識
企業の数値的な魅力を把握するためには、会計知識が必要になります。
有価証券報告書に記載されている売上、費用、総資産、負債などの情報から、その企業の収益性や財務安定性を把握します。
会計の理解を深めるためには、以下の資格を取得するのがおすすめです。
日商簿記3級 | ビジネス会計3級 | |
到達目標 | 経理関連書類の適切な処理ができる | 財務諸表を理解するための基礎的な力を身につける |
合格率 | 40%程度 | 70%程度 |
受験費用 | 3,000円程度 | 5,000円程度 |
これらの資格は難易度が低めではあるものの、最低限の会計知識を身につけている証明として就活の書類選考や面接でも役立つ可能性が高く、一石二鳥です。
業種別の特徴
全ての企業は、ビジネスの形態に応じて業種に分類でき、その業種ごとに収益性や安全性のパターンが生じます。
たとえば、製造業は機械設備への投資が必要なため、借入金が多く財務安全性が低くなりがちである一方で、ある程度の価格決定力を持つため収益力は高くなりやすい傾向があります。
それぞれの業種の一般的な特徴を示すので、前提として理解しておきましょう。
収益力 | 財務安全性 | 企業例 | |
製造 | 高い | 低い | トヨタ自動車 パナソニック |
卸売 | 低い | 高い | 三菱商事 伊藤忠 |
小売 | 低い | 低い | イオン セブン&アイ |
サービス(IT) | 高い | 高い | 富士通 NEC |
サービス(飲食) | 低い | 低い | ゼンショー 日本マクドナルド |
調査したい企業の業種がわからない場合は、「株式会社〇〇 業種」で検索すると確認できます。
企業のライフサイクル
人間に若さや老いがあるように、企業にもライフサイクルがあります。
企業がライフサイクルのどの位置にあるかによって、経営指標や従業員のキャリアに特徴が出てきます。
たとえば、新興企業はマーケットシェアをとることが最優先のため、積極的に投資を進める傾向があります。
よって、成長率は高いですが、借入金が多く財務安全性が低くなりがちです。
収益力 | 財務安全性 | 企業例 | |
新興企業 | 高い | 低い | マネーフォワード ビズリーチ グノシー |
成熟企業 | 低い | 高い | 花王 三井住友銀行 |
有価証券報告書の見方
ここからは実例を参考にしながら、有価証券報告書の見方について解説します。
具体的には、以下の項目に触れていきます。
- 企業概要の把握
- 経営指標から企業の力を数字で把握する
- 沿革から企業のストーリーを想像する
- 事業内容からビジネスモデルを把握する
- 従業員の状況を確認する
- 収集した情報を活用する
順を追って把握していきましょう。
企業概要の把握
ホームページや決算説明資料で企業概要を把握します。
有価証券報告書は年間4,000件以上提出されるため、やみくもに読んでいくのは得策ではなく、知らない企業の有価証券報告書をいきなり読んでも理解できないかもしれません。
まずは、以下の手順でざっくりと概要を掴みましょう。
- ターゲット企業を決める
- ホームページで企業概要や事業の概要を確認する
- 決算説明資料の確認
ターゲット企業を決める
調査したい企業が明確な場合は、その企業で問題ありません。
明確に決めていない場合は、興味のある業界から絞っていくのがおすすめです。
たとえば、IT業界に興味がある場合は「日本の主要上場企業 IT業界」で検索し、気になる企業を抽出します。
ホームページで企業概要や事業の概要を確認する
ターゲット企業が決まったら、イメージをざっくり掴むためにホームページで概要を確認しましょう。
以下は、株式会社メルカリのホームページに記載されている事業内容です。
有名な「メルカリ」サービスに加え、フィンテックサービスの「メルペイ」等についても、わかりやすく記載されています。
出典元:事業内容|株式会社メルカリ
決算説明資料の確認
おおまかに事業内容が把握できたら、実際にIR資料を確認します。
ホームページでIR情報のページをクリックし、最新の決算説明資料をダウンロードしましょう。
こちらは株式会社メルカリの決算説明資料です。
総括ハイライトをはじめ、決算の総括や中長期の方針がわかりやすく記載されています。
出典元:株式会社メルカリ|決算説明資料
経営指標から企業の力を数字で把握する
いよいよ実際の有価証券報告書を読み始めます。
IR情報から有価証券報告書をダウンロードします。
目次ページなど数ページ読み飛ばすと、【主要な経営指標等の推移】のページにたどり着きます。
出典元:株式会社メルカリ|有価証券報告書
ここでは直近5年分の経営指標が記載されており、該当企業の成長可能性や投資家からの評価などが確認できます。
特に、以下の5つについて確認しましょう。
- 売上高
- 経常利益
- 自己資本比率
- 自己資本利益率
- 株価収益率
それぞれの見方を説明していきます。
売上高
売上高が大きいほど、社会に求められている「モノ」や「サービス」を多く供給している企業だといえます。
確認ポイントは「増加傾向にあるか」。
例示しているメルカリ株式会社の売上高は、過去5年で3倍以上に成長しており、稼ぐ力が大幅に成長していることがわかります。
経常利益
「1年間でどれだけ収益を残したか」を表す指標です。
この指標が高いほど、従業員や株主への還元、さらなる投資に積極的に動く余裕がある企業だといえます。
確認ポイントは「黒字であるか」、「増加傾向にあるか」。
メルカリ株式会社の経常利益は、非常に波がありますが、直近の2023年度は黒字化しており、収益力の成長が確認できます。
自己資本比率
「安全にビジネスを持続できるか」を表す指標です。
自己資本比率の割合が高ければ、返済資金の負担や支払利子の負担が軽減されるため、安定したビジネス運営が期待できます。
確認ポイントは「40%を上回っているか」。
下回っていれば、安全性が低い状態であると考えられます。
メルカリ株式会社の自己資本比率は、継続的に40%を下回っており安全性は低い状態といえます。
自己資本利益率
「お金を効率的に使えているか」を表す指標です。
自己資本を分母・利益額を分子として計算しており、この割合が高い場合は少ない自己資本でより大きな利益を稼いでいることになり、やりくり上手の企業ということになります。
確認ポイントは「8%を上回っているか」。
メルカリ株式会社の自己資本利益率は、最新2023年度で20%を上回っており、効率性の高さが確認できます。
株価収益率
「投資家からの客観的な評価」を表す指標です。
確認ポイントは「15倍」を上回っているか。
上回っていれば、投資家からの評価が高いと考えられます。
メルカリ株式会社の自己資本利益率は、最新2023年度で41.46倍であり、評価の高さが確認できます。
株式会社メルカリの経営指標とその評価をまとめると、以下の結果となります。
経営指標 | 評価 | |
売上高 | 5年で3倍以上 | 収益力が増加傾向 |
経常利益 | 非常に波がある 17,449百万円の黒字 | 収益力が増加傾向 |
自己資本比率 | 12.9% | 安全性が低い |
自己資本利益率 | 28.9% | 資金効率性が非常に高い |
株価収益率 | 41.46倍 | 投資家の評価が非常に高い |
沿革から企業のストーリーを想像する
沿革とは、企業の設立から現在までの歩みを年表形式で表示したものです。
以下は、株式会社メルカリの沿革を記載したページです。
出典元:株式会社メルカリ|有価証券報告書
設立は2013年と、上場企業の中では比較的新しい企業であることがわかります。
その後「メルカリ」を主軸に事業を拡大し、設立から5年後の2018年に東証市場に上場しています。
たった数年の間に、スポーツチームの買収や、フィンテックサービスへの進出、海外進出などを進めており、新興企業らしく意思決定の早い企業であることがわかります。
経営指標では、売上高が大きく増加しているにもかかわらず、経常利益に波がありました。この沿革と併せてみてみると、稼いだお金を積極的に事業多角化や広告宣伝に投資していることが想像できます。
事業内容からビジネスモデルを把握する
事業内容のページでは、その企業のビジネスモデルの概要を把握できます。
実際に行われている事業内容だけでなく、企業が掲げるビジョンやミッション、従業員に向けた行動指針が確認できる場合があります。
どんなモノやサービスを提供しているのかを把握することも重要ですが、その裏側にある企業の狙いとして「どんな顧客ニーズを満たそうとしているのか」まで理解できると、より効果的な企業研究ができるでしょう。
従業員の状況を確認する
従業員の状況では、以下のような項目を確認できます。
- 在席する従業員の人数
- 平均年齢
- 平均勤続年数
- 平均年間給与
グループ全体での情報ではなく、有価証券報告書を提出している当該企業単体の情報であることには注意しましょう。
株式会社メルカリの場合は、若く優秀な人材を高額な給与で採用していることが想像できます。
これが、新陳代謝や意思決定の早い企業文化につながっている要因なのかもしれません。
出典元:株式会社メルカリ|有価証券報告書
収集した情報を活用する
これ以降のページでもさまざまな情報を把握できますが、ここまでで必要最低限の情報収集には充分でしょう。
株式会社メルカリの有価証券報告書で把握できた事項は、以下のようにまとめられます。
経営指標 | ・売上は5年で3倍、利益も黒字化 ・安全性は低いが、資金効率性は高い ・投資家からの評価は高い |
沿革 | ・設立10年程度の新興企業 ・企業買収等により事業多角化や海外進出に積極的 |
事業内容 | ・メルカリ・・・マーケットプレイス ・メルペイ・・・フィンテックサービス |
従業員 | ・平均年齢は35歳 ・平均勤続年数は3~4年 ・平均給与は1,000万 |
1社の有価証券報告書を調査しただけでは、相対的な魅力を理解することはできないため、同業他社と比較することで、他者よりも経営指標が良いのか、平均給与が高いのかなどを把握できます。
「株式会社〇〇 同業他社」「〇〇業界 主要3社」などのワードで検索し、同業他社の有価証券報告書も調査してみましょう。
まとめ
今回は、IR資料の概要、有価証券報告書の見方について例を挙げながら深掘りしました。
有価証券報告書は一見すると100ページ以上のとっつきにくい資料ですが、慣れてくるとそれぞれの企業の特色がよく現れている面白い資料に感じられるはずです。
今回の記事を参考に企業分析を実践し、しっかり理解した上で面接に臨むことで、ほかの就活生と差をつけましょう。